冬キャンプ場で快適に過ごすためには暖房が必須です。
最近は石油ストーブや薪ストーブで暖を取るキャンパーが多くなりました。
特に石油ストーブは灯油を補充するだけで寝ている間も燃え続けてくれるので手軽で便利な暖房器具です。
ただこれら火を使う暖房器具は使い方を間違えると火災や一酸化炭素中毒という重大な事故に直結するおそれがあります。
今回は特に「一酸化炭素中毒」にスポットを当ててその怖さと回避するための方法について考えてみます。
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一酸化炭素とは
石油やガソリンなど炭素を含む物質が燃える時、酸素の供給が十分な場合は完全燃焼して「二酸化炭素」(CO2)が発生します。
しかし酸素の供給が不十分な場合は、不完全燃焼を起して一酸化炭素が発生します。
一酸化炭素は無臭であり、比重は空気と同じ(0.967)です。
一酸化炭素は非常に毒性の強い物質です。
人間を含む動物は呼吸により空気中の酸素を血液中のヘモグロビンが取り込んで体全体に届け、生命活動を維持しています。
一酸化炭素はこのヘモグロビンとの結合力が強く、それは酸素のなんと200倍!
そのため一酸化炭素を含んだ空気を吸い込むとヘモグロビンは酸素の代わりに一酸化炭素と結合し全身に周り、酸欠状態が一気に進んでしまうのです。
一酸化炭素中毒の症状
一酸化炭素中毒の症状は以下となります。
【軽度】
頭痛、吐き気、めまい、集中力の低下、嘔吐、眠気、協調運動障害など
【中度】
判断力の低下、錯乱、意識消失、けいれん発作、胸痛、息切れ、低血圧、昏睡など
【重度】
多くが死に至る
このように症状が中度以上に進んでしまうと自分ひとりでは対処が難しくなるので、軽度の状態のときに対処を行う必要があります。
事故事例
事例1
新潟県の妙高山の山小屋で9月15日、男性登山者(30)がテントの中で死亡しているのが発見された。
警察の調べによると、男性の死因は一酸化炭素(CO)中毒だった。
事例2
韓国の京畿道驪州市(ヨジュシ)のあるキャンプ場で、50代の夫婦がテントの中で遺体で発見された。
テントの中では炭火を起こした跡のある焚き火台が発見された。
事例3
2021年1月18日、千葉県いすみ市の山林で、テント内で石油ストーブを使用していたカモ猟の男性3人の遺体が発見された。
事例4
2022年1月、岩手県盛岡市の岩洞湖で、テント内でワカサギ釣りをしていた男女4人が一酸化炭素中毒の疑いで救急搬送された。
事例5
2020年8月、紋別市のキャンプ場で、テントに戻った男性から家族が一酸化炭素中毒のようだと消防に通報があった。
一酸化炭素中毒を回避するために
一酸化炭素中毒を回避する方法について考える前に、ここでもう一度一酸化炭素が発生する原因を思い出しましょう。
一酸化炭素が発生する条件は『不完全燃焼』でした。
この不完全燃焼が起こる原因は酸素不足です。
では酸素不足になる原因はキャンプの場合はただ一つ、締め切ったテントの中で暖房器具を使用することです。
であるならば対策は簡単ですね。
締め切らなければ良い。
しかし、それだけでは不十分です。
テントの中に空気の流れを作ることが重要です。
空気の流れを作る
空気の流れを作るのはとても簡単です。
暖房器具で暖められた空気は軽くなり上昇します。
上昇した空気が天井付近のベンチレーターから外に出るとその分を補うために外気がテント内に入ってきます。
この流れは暖房器具が稼働している間中継続します。
つまり常にフレッシュな外気がテント内に補給される状態になるわけです。
これにより暖房器具が酸素不足のために不完全燃焼を起こすことがなくなります。
要点をまとめます。
①テントのベンチレーターを全開にする。
(複数ある場合は一つで良いです)
②テントの入口を1/3程開けておく。
ただこれだけ。
簡単ですね。
これで不完全燃焼による一酸化炭素中毒のリスクが大きく減ります。
一酸化炭素チェッカーを利用する
テント内の換気を行うとともに一酸化チェッカーをテント内に置いて万が一のときに備えましょう。
一酸化炭素チェッカーはネットで簡単に買うことができますが、選ぶ際のポイントは以下の3点です。
・センサーが日本製であること
一酸化炭素センサーは日本製であるものを選びましょう。
・100ppmを感知するセンサーであること
一酸化炭素中毒は空気中の一酸化炭素濃度が200ppm程になるとその症状が出始めます。
そのため100ppmの濃度を感知できるセンサーであれば前もって換気不足等の問題に対処することができます。
・マニュアルや表示が日本語であること
製品のマニュアルやディスプレイ上の表示が日本語であるものを選びます。
英語や中国語等外国語だと設定や表示の意味が正確にわからず、重要な情報を見逃すおそれがあります。
・ストラップが付いていること
ストラップが付いているとテントの天井から吊り下げることが可能になり、さらに検知位置も自由に変更できます。
●一酸化炭素チェッカーの寿命について
一酸化炭素チェッカーの心臓部であるセンサーには寿命があり、平均すると5年ほどです。
そのため製造日をチェッカー本体に書き込み、寿命が近くなったら新しいものに交換しましょう。
高地での使用について
標高が高くなると酸素濃度が低くなるので通常の石油ストーブやガスストーブは不完全燃焼を起こすことがあります。
そのため、使用している器具のマニュアルやメーカーサイトで使用可能標高についてチェックすることをオススメします。
多くは1000mから1300m程が使用可能標高となっています。
機種によっては高地モード設定ができるものもあるので、高地で使用することが多い場合はその機能があるものを選びましょう。
木炭に注意
バーベキューを美味しくしてくれる木炭。
この木炭は一酸化炭素が発生しやすい燃料です。
不完全燃焼していなくても一酸化炭素を出すくらいなので、これが酸素不足の状態で燃焼すると石油等の比ではないくらい大量の一酸化炭素を吐き出します。
したがって木炭を使う際は必ずテントの外、もしくはタープの下のような開放された場所であることが必須です。
昭和初期までの練炭や木炭を色々なシチュエーションで使用していた時代には一酸化炭素中毒で少なくない数の人が亡くなっています。
それくらいヤバい燃料なんですよ、木炭って。
まとめ
冬キャンプは暖房器具を上手に使うことが快適に過ごすための要です。
しかし石油ストーブや薪ストーブ、さらにはガスストーブのような「燃焼」タイプの暖房器具は使い方を誤ると命に関わる事故に繋がります。
・締め切ったテント内では絶対に使用しない。
・テント内に自動的な換気の流れを作る。
この2つのポイントを常に意識して安全な冬キャンプを楽しみましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。