秋のキャンプ場は魅力がいっぱい。
色づく紅葉、澄んだ空気、心地よい焚き火。そして、食欲の秋。
そんな秋の森を散策していると、木の根元や落ち葉の間から、ひょっこり顔を出しているキノコを見つけることがあります。
「おっ! シイタケ発見!」
「いやいや、これはシメジじゃないか?」
「ちょっと焼いて食べてみる?」
……ちょっと待ってください。
そのキノコ、本当に食べられるキノコですか?
実は、日本には食用キノコと見た目がよく似た毒キノコが数多く存在します。
しかも厄介なのは、毒キノコが必ずしも毒々しい姿をしているわけではないこと。
いかにも美味しそうな顔をして、恐ろしい毒を隠し持っているものもいるのです。
今回は、秋キャンプで気をつけたいキノコによる食中毒について解説していきます。
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秋の森には誘惑がいっぱい!
秋の森を歩いていると、あちらこちらでキノコを見かけます。
倒木の上、湿った落ち葉の間、木の根元。
まるで森が無料のキノコ直売所になったような光景です。
しかも、なかなか立派なキノコが生えていることもあります。
「これはスーパーで買ったら結構な値段がするぞ!」
そんなことを考え始めたら、すでに危険信号です。

野生のキノコは、見た目だけで食用か毒キノコかを判断するのが非常に難しいものです。
食用キノコにそっくりな毒キノコもあります。
そして、美味しそうに見えることと、安全に食べられることには何の関係もありません。
森のキノコは、スーパーの野菜売り場とは違います。
値札もなければ、食品表示もありません。
もちろん「毒入り」のシールも貼ってありません。
秋の森でキノコを見つけたら、まずは観察して楽しむ。
それが安全なキャンパーの第一歩です。
毒キノコは意外と身近に生えている
毒キノコというと、人里離れた深い山奥に生えているイメージがありませんか?
ところが、そうとは限りません。
毒キノコは、公園や住宅地の緑地、キャンプ場の林など、意外と身近な場所にも発生します。
つまり、テントのすぐ近くに毒キノコが生えていても不思議ではないのです。
さらに困るのが、食用キノコと毒キノコの見た目が似ていること。
例えば、食用のムキタケやシイタケなどと間違えられるツキヨタケ。
食用のウラベニホテイシメジなどと間違えられるクサウラベニタケ。
どちらも日本でキノコ食中毒の原因となっている代表的な毒キノコです。
キノコに詳しくない人が見れば、「うん、これは絶対に食べられる!」と自信満々に言ってしまうかもしれません。
しかし、その自信に根拠がなければ、ただの危険な思い込みです。
キノコの世界では、見た目が似ていても中身はまったく別物。
キノコ図鑑を見ながら判別しようとしても、素人は肝心な違いを見落としてしまい、結果七転八倒の苦しみを味わうことになるのがオチです。
それほどこのキノコの見分け方は難しいことを覚えておきましょう。
人間なら双子の兄弟で済みますが、キノコの場合は片方が食材、もう片方が救急車のお世話になる原因ということもあるのです。
これだけは知っておきたい危険な毒キノコ
ここでは、日本で注意したい代表的な毒キノコを紹介します。
ただし、最初に大切なことをお伝えしておきます。
これから紹介する特徴は、キノコを食べられるかどうか判定するためのものではありません。
あくまで危険なキノコの存在を知るための情報です。

① カエンタケ:触れることも避けたい猛毒キノコ
赤い炎のような形をした、非常に特徴的なキノコです。
まるで地面から小さな赤い指が突き出しているようにも見えます。
見た目はちょっと不気味ですが、珍しい形なので、つい触ってみたくなるかもしれません。
しかし、これは絶対にやめましょう。
カエンタケは極めて毒性が強く、食べると命に関わることがあります。また、汁液が皮膚に付くと炎症を起こすおそれもあります。
「変わったキノコだな。ちょっと触ってみよう」
その好奇心は、写真撮影だけに使ってください。
② ドクツルタケ:美しい白い姿にご用心
全体が白く、いかにも清楚な姿をしたキノコです。
名前を知らなければ、危険なキノコには見えないかもしれません。
しかし、ドクツルタケは極めて危険な猛毒キノコです。
食べると、激しい胃腸症状の後に肝臓などに深刻な障害を起こし、死亡することもあります。
しかも、食べてから症状が出るまでに時間がかかる場合があります。
「昨日食べたけど、何ともないから大丈夫!」と思っていたら、翌日になって体調が急変することも。
白くて綺麗だから安全?
そんな理屈は、キノコの世界では通用しません。
③ クサウラベニタケ:食用キノコに似た危険な存在
クサウラベニタケは、食用のウラベニホテイシメジなどと間違えられることがあります。
食べると、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などを引き起こします。
見た目が地味なので、毒キノコという印象を持ちにくいかもしれません。
しかし、毒キノコは目立つ格好をしているとは限りません。
むしろ、普通のキノコの顔をしているから厄介なのです。
厚生労働省《クサウラベニタケ》
④ ツキヨタケ:シイタケに似た食中毒の常連
ツキヨタケは、倒木などに発生する毒キノコです。
シイタケやムキタケなどの食用キノコと間違えられることがあります。
食べると、激しい嘔吐や腹痛、下痢などを起こします。
名前だけ聞くと、何だか風流です。
「月夜茸」
秋の夜長にぴったりの名前ではありませんか。
しかし、名前の美しさと食べた後の結末は、まったく別問題です。
⑤ ニガクリタケ:小さくても油断できない
ニガクリタケは、倒木や切り株などに群生することがある毒キノコです。
食用のナラタケなどと間違える危険があります。
小さなキノコがたくさん生えていると、「これはキノコ汁にぴったりだ!」と思ってしまいそうですが、ちょっと待ってください。
ニガクリタケには重い中毒を引き起こす危険があります。
小さいから毒も少ない、というわけではありません。
キノコの危険度は、サイズでは決まらないのです。
その見分け方、全部迷信です!
昔から、毒キノコの見分け方にはさまざまな言い伝えがあります。
しかし、その多くは科学的な根拠のない迷信です。
ここで代表的なものを紹介しましょう。
「派手な色のキノコは毒」→ ウソ!
確かに、派手な色の毒キノコも存在します。
しかし、地味な茶色や白いキノコにも猛毒のものがあります。
逆に、鮮やかな色をした食用キノコもあります。
つまり、色だけでは判断できません。
毒キノコが全員、赤い服を着て「私は毒です!」と自己紹介してくれれば、こんなに苦労はしないのです。
「虫が食べていれば安全」→ ウソ!

これもよく聞く話です。
キノコに虫食いの跡があると、「虫が食べているんだから、人間も大丈夫だろう」と思う人がいます。
しかし、虫と人間では身体の仕組みも、毒に対する反応も異なります。
虫が食べているからといって、人間にとって安全とは限りません。
そもそも、虫に試食係をお願いした覚えはありません。
「縦に裂けるキノコは食べられる」→ ウソ!
キノコが縦に裂けるかどうかで、毒の有無は判断できません。
毒キノコにも縦に裂けるものがあります。
裂け方で安全性が分かるなら、専門家も苦労しません。
「ナスと一緒に煮れば毒が消える」→ ウソ!
昔から伝わる有名な迷信です。
しかし、ナスに毒キノコの毒を無害化する能力はありません。
ナスは美味しい野菜ですが、解毒の専門家ではないのです。
「しっかり加熱すれば大丈夫」→ ウソ!
これが特に危険な思い込みです。
毒キノコの毒成分には、通常の調理加熱では分解されないものがあります。
焼いても、煮ても、揚げても安全になるとは限りません。
毒キノコは、料理の腕前で克服できる相手ではないのです。
毒キノコを食べると身体に何が起こる?
毒キノコによる食中毒の症状は、キノコの種類によって異なります。
代表的な症状としては、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などがあります。
しかし、怖いのはそれだけではありません。
キノコの種類によっては、肝臓や腎臓などに深刻な障害を引き起こすことがあります。
さらに注意したいのが、症状が出るまでの時間です。
食べてから比較的短時間で症状が出るものもあれば、6時間以上、場合によっては翌日以降になって症状が現れるものもあるのです。
特に危険なのは、いったん症状が落ち着いたように見えるケース。
「昨日は大変だったけど、もう治ったみたいだ!」と安心していたら、実は体内で肝臓などへの障害が進行していることもあります。
症状が軽いから大丈夫。症状が消えたから大丈夫。
この自己判断が非常に危険であることを忘れないで下さい。
「ちょっとだけ味見」が命取り!

キャンプ料理をしていると、ついつい味見をしたくなります。
特にキノコ汁やキノコ鍋などは、秋らしい魅力的な料理です。
しかし、正体の分からない野生のキノコで味見をするのは絶対にやめましょう。
「ほんの一口だから大丈夫」
「みんなで少しずつ分ければ問題ない」
そんな考えは危険ですし、そもそもみんなを巻き込んでどうする!。
毒キノコの種類や摂取量によっては、少量でも重い中毒を引き起こすことがあります。
また、鍋の中に毒キノコが混ざれば、煮汁にも毒成分が移ることも当然考えられますね。
キノコだけ取り除けば安全、というわけではありません。
せっかく仲間と囲む楽しいキノコ鍋。
全員そろって病院送りになっては、笑い話にもなりませんね。
キャンプで使うキノコは、信頼できるお店で購入したものだけにしましょう。
こんな事があった(汗)
まだキャンプを始めてそう間もない頃のお話。
仲間たちと精進湖でキャンプしたのです。
時期は10月。
そうです、キノコの季節。
皆が酒をだいぶ飲んで宴もたけなわの頃、一人が「美味そうなキノコ見つけた!」と、ぱっと見しいたけのようなキノコを手にしていました。
私は危ないからやめろと言ったのですが、そこは酒の勢いもあり、また若さゆえの″ノリ”もあって、そいつはキノコを焚き火で炙ってパクリ…とやった訳です。
私はこれから起こる修羅場を想像しながら彼の様子を見ていました。

結果!…
何も起こらず。
彼は翌日もケロッとしている。
幸い毒キノコではなかったようです。
しかしこれはあくまでもレアケース。
良い子は絶対に真似してはいけません。
特にファミリーキャンプでは家族全員を危険に晒しますし、子どもが親の行動を見ています。
正しいアウトドアでの行動を教えるためにも、フィールドに生えているキノコへの正しい対応が重要です。
もし毒キノコを食べてしまったら?
ここは特に重要なので、しっかり覚えておきましょう。
もし、毒キノコの疑いがあるキノコを食べてしまった場合は、症状がなくても速やかに医療機関へ相談し、受診してください。
「もう少し様子を見よう」という判断は危険です。
特に、意識がおかしい、呼吸が苦しい、けいれんしている、激しい嘔吐を繰り返しているなどの症状がある場合はすぐに119番へ連絡してください。
その際、次のことを伝えると診断に役立ちます。
・いつ食べたか
・どれくらい食べたか
・どのように調理したか
・一緒に食べた人はいるか
・どのような症状が出ているか
食べ残しや調理前のキノコがあれば、医療機関に持参できるよう保管しておきましょう。
採取場所の写真なども参考になります。
また、自己判断で無理に吐かせたり、民間療法を試したりしてはいけません。
キャンプ場は病院から遠い場所にあることも珍しくありません。
だからこそ、早めの対応が大切です。
そして、同行者が同じキノコを食べていた場合は、症状がなくても医療機関に相談してください。
ここだけは、キャンプの経験年数も、料理の腕前も関係ありません。
「大丈夫だろう」ではなく「すぐ相談する」が正解です。
実はスーパーのキノコにも注意が必要

ここまで野生の毒キノコについてお話ししてきましたが、実はスーパーで購入した食用キノコにも注意点があります。
もちろん、通常の流通経路で販売されている食用キノコは、野生の正体不明のキノコとは違います。
しかし、保存状態や調理方法が悪ければ、食中毒の原因になることがあります。
特に秋キャンプでは、昼間は暖かくても夜になると冷え込むことがあります。
「秋だから涼しいし、食材は外に置いておけば大丈夫だろう」と思いがちですが、日中のテント内や車内は意外と高温になることもあります。
キノコは傷みやすい食材です。
購入後は表示に従って冷蔵保存し、キャンプ場でも保冷剤を入れたクーラーボックスなどで適切に温度管理しましょう。
また、ぬめりが強い、異臭がする、明らかに変色しているなど、傷みが疑われるものは食べないこと。
そして、食用キノコであっても、種類に応じて十分に加熱することが大切です。
特にシイタケなどは、生や加熱不足の状態で食べることを避けましょう。
せっかく毒キノコを避けたのに、食材管理で失敗してしまっては本末転倒です。
秋キャンプで安全にキノコを楽しむ方法
では、秋キャンプでキノコ料理を楽しむにはどうすればよいのでしょうか?
答えは簡単です。
食べるキノコは、スーパーで買って持っていく。
これに尽きます。
シイタケ、シメジ、エリンギ、マイタケ、エノキタケ。
どれも秋キャンプの料理にぴったりです。
例えば、焚き火で作るキノコのホイル焼き。
アルミホイルにキノコとバターを入れ、しっかり加熱してから醤油を少々。
これだけで立派な秋のご馳走になります。
キノコたっぷりの炊き込みご飯もいいですね。
肌寒い夜には、キノコ鍋も最高です。

そして、森で見つけた野生のキノコはどうするか?
採るより、撮る。
スマートフォンやカメラで写真を撮って楽しみましょう。
珍しいキノコを見つけたら、形や色、生えている場所を観察するのも面白いものです。
ただし、写真やキノコ判定アプリだけで食用かどうかを判断してはいけません。
また、小さな子どもやペットが誤って口にしないよう、周囲の大人が注意しておくことも大切です。
秋の森には、食べなくても楽しめる魅力がたくさんあります。
まとめ
秋キャンプは、一年の中でも特に魅力的な季節です。
美しい紅葉、澄んだ空気、静かな森。
そして、美味しい秋の味覚。
そんな季節だからこそ、野生のキノコには十分注意したいものです。
今回のポイントを振り返ってみましょう。
・毒キノコはキャンプ場など身近な場所にも生えている
・食用キノコと毒キノコは見た目が似ていることがある
・色や虫食いなどで毒キノコを見分けることはできない
・加熱しても無毒化できない毒キノコがある
・毒キノコを食べた疑いがあれば、症状がなくても速やかに医療機関へ
・キャンプ料理には信頼できるお店で購入した食用キノコを使う
キャンプの醍醐味は、自然を楽しむことです。
しかし、自然の中にあるものが、すべて人間にとって安全とは限りません。
森で立派なキノコを見つけたとき、「これは美味しそうだ!」と思う気持ちは分かります。
でも、そのキノコが本当に食べられるものなのか、見た目だけでは分からないのです。
秋の森でキノコを見つけたら、カメラを向けましょう。
そして、キノコ料理が食べたくなったらスーパーへ。
野生のキノコは写真に収める。
食用のキノコはお腹に収める。
これが、秋キャンプを最後まで楽しく過ごすための、いちばん確実な方法です。
何しろキャンプの思い出は、病院のベッドではなく、焚き火の前で作りたいですからね。
厚生労働省の毒キノコによる食中毒への注意喚起ページも参考にして下さい。
最後まで読んでいただきありがとうございます。









