楽しいキャンプですが、自然の中で寝起きする以上、思わぬアクシデントや危険な事態に直面することもあります。
今回は実際にあった事例を見ながらリスクマネジメントについて書きたいと思います。
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天候にかかわるリスク
■大雨により13人が流され死亡
【事故の概要】
1999年8月14日、神奈川県玄倉川のキャンプ場の中洲でキャンプ中のグループ18人が、大雨による増水で流され13人が死亡する事故が発生しました。
この事故はおりからのオートキャンプブームもあり、前日の13日玄倉川キャンプ指定地以外の河原や中洲に多くのキャンパーがテントを張っている状況でした。
当日の15時頃から振り始めた雨により、上流のダム管理職員が河原や中洲にいるキャンパーに退避を呼びかけ、大部分のキャンパーが退避しましたが、中洲にテントを張っていた21人が呼びかけに従わずそのままキャンプを続けます。
16時50分には神奈川県全域に大雨洪水注意報が発令、19時35分には雨足がさらに激しくなりキャンプ地の5km上流の玄倉ダムが放流予告のサイレンを鳴らしています。
19時50分にダム管理職員が再びキャンプ場を訪れ中洲からの退避を勧告しましたが拒否されてしまい、職員は警察に説得を要請。
警察の説得で3名が退避しますが残りは「大丈夫」とその場に居続けました。
14日の午前6時35分、警察官がまだ水に浸かっていない中洲に行って退避を呼びかけますがこれにも従わず、8時頃には本格的な暴風雨となり、その30分後には中洲も激しい濁流に覆われてしまいます。
中州に取り残された18人は警察やレスキュー隊の懸命の救助活動も虚しく、腰のあたりまで達した濁流に流され13人が命を落としました。
【事故の原因】
この事故の原因は以下となります。
①キャンプ場の指定地域外にテントを張ったこと。
キャンプ場は予想される悪天候等のリスクを考慮してキャンプエリアを指定しています。
テントは指定されたエリア内に張りましょう。
②雨の天気予報にもかかわらず川の中洲にテントを張ったこと
川の中州は増水した場合最初に水に浸かってしまいます。また川岸との距離があるので避難する際にも流れの早い部分を渡らなければなりません。流れの速い水流には簡単に足を取られてしまいます。
キャンプ期間中に絶対に雨が降らない場合以外は中洲でのキャンプは避けるべきです。
③退避勧告があったにもかかわらず従わなかったこと
地元の人や河川の管理職員からの避難勧告には必ず従いましょう。
また、キャンプのリーダーは安全性を考慮し、天候等の条件次第では潔くキャンプを中止し撤収する決断をしなければなりません。
「大げさだよ」と言われようが、全員が無事に帰り着くことを最優先にしましょう。
■落雷により4人死亡
【事故の概要】
昭和30年8月3日長野県阿智村富士見台のキャンプ場において、キャンプ中に振り始めた雷雨を避けるために9人の中学生がテントに逃げ込んだところその支柱に雷が落ち、4人が死亡し5人が重傷を負ってしまいました。
【事故の原因】
この事故の原因は雷雨を避けるためにテント内に避難したことにあります。
キャンプ中に雷雨に遭ったら以下の行動を取りましょう。
①車の中に避難する
②管理棟等の建物の中に避難する
③やむなく木陰に避難する場合は高さが4メートル以上の木を選び、木の幹から3〜4メートル以上の間隔を取る
また、落雷の危険性が有るときはできるだけ姿勢を低くして移動し、傘や釣り竿などを高く掲げないことも重要です。
ちなみに急に真っ黒い雲に覆われて、冷たい風が吹き始め、大粒の雨、雹、あられが降り始めるのは発達した積乱雲に覆われたときの状況であり、落雷の前兆です。
早めの避難をオススメします。
キャンプ道具によるリスク
■ガスカートリッジの爆発で5人が軽傷
【事故の概要】
2020年12月7日北海道苫小牧市のキャンプ上でテント内のガスカートリッジが爆発し、中にいた5人が顔や手に火傷を負って病院に運ばれました。
5人とも命に別条はないということです。
【事故の原因】
ガスカートリッジのすぐ近くでバーベキューコンロでバーベキューをしていたことが事故の原因です。
ガスカートリッジがコンロの輻射熱で熱せられ、それで爆発したものと思われます。
ガスやガソリンバーナーやストーブの近くにはガスカートリッジを置かないようにしなければなりません。
また、ガスバーナーで加熱するときに使用法を誤ると爆発する危険があります。
東京消防庁のサイトに注意勧告がありましたのでリンクを張っておきます。
■一酸化炭素中毒で4人搬送
【事故の概要】
2020年8月15日北海道紋別市のキャンプ場で女性4人が一酸化炭素中毒とみられる症状を訴え病院に搬送されました。
4人とも命に別条はないということです。
【事故の原因】
締め切ったテント内で炭火を使っていたことが原因です。
換気が良くない場所で炭、ガス、ガソリン、灯油等の器具を使うとほぼ間違いなく一酸化炭素中毒になります。
特にテントは空間が狭く、あっという間に一酸化炭素が充満してしまいます。
そのため、それらの器具を使う場合はテントを締め切らず、風通しを良くすることが必要です。
■一酸化炭素中毒で3人が死亡
【事故の概要】
2021年1月18日千葉県いすみ市釈迦谷の山林のテント内で3人の男性が死亡しているのが発見されました。
3人はカモ猟のために山中にテントを張って宿泊したと見られ、中には暖を取るための石油ストーブがありました。一酸化炭素中毒死とみられます。
【事故の原因】
締め切った狭いテント内で石油ストーブを使ったことが原因です。
ストーブだけでなくランタンやバーナー等を使っても同じ結果になりますので、締め切ったテント内で炭、ガス、ガソリン、灯油等の器具を使用するのは厳禁です。
■着火剤が飛び散り女性が意識不明の重体
【事故の概要】
2010年7月18日愛知県大治町の民家でバーベキューの準備中に火のついたジェル状の着火剤が飛び散り、近くにいた女性の衣服に付着して燃え広がり、女性は顔などにやけどを負って一時意識不明の重体になりました。
命に別条はないとのことです。
【事故の原因】
火のついた炭に着火剤を追加しようとしたことが原因です。
ゼリー状の着火剤」はメチルアルコール系を主成分としているので、引火点が低く非常に燃えやすい特徴があります。そのため火のついた炭などに直接追加すると爆発的に燃えて飛び散ることがあるので注意が必要です。
まとめ
以上6つの事例を紹介し、その原因について書いてきましたが、キャンプは自然の中で行うもの故に自然現象に大きな影響を受けます。
せっかく来たのだから…とか、せっかく休みをとったのだから…と考え、なんとかなるだろうと甘く見ていると大きなアクシデントに見舞われてしまいます。
天候の急変等が発生した場合は天気予報や周囲の状況をよく観察し、場合によっては潔く撤収する勇気が必要ですし、特にキャンプリーダーはメンバーの安全最優先で判断行動するようにしましょう。
また火を使う道具は常に一酸化炭素中毒や爆発、火災の危険と隣り合わせです。
使用する際は換気を最優先に考え、可燃物やガスカートリッジ等の置き場所にも気を配りましょう。
以上、キャンプ場で発生した事故の実例を元にリスクマネジメントについて書いてきました。
次回はキャンプにおけるリスクマネジメント全般について書きたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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